イジワルな先輩との甘い事情


「優しく、して欲しいです……」

やっとの思いで答えると、すぐにかすかな笑い声が返された。

「いつも優しくしてるつもりなんだけどな」
「あっ、いつもも優しいですけど……だって、どうして欲しいって聞くから……」

また笑われて顔が熱くなったところで、顎をくいっと持ち上げられてそのままキスされた。
ちゅって弾くようなキスをした先輩は、至近距離からにこっと微笑んでいて……でも、それ以上動くつもりはないみたいだった。
少し近づけばすぐキスできちゃうような距離なのに、いつもみたいにしてくれないもどかしさに、思わず眉を寄せると、先輩に「どうかした?」って聞かれてしまう。

意地悪されてるのは分かったけど……先輩の服をキュッと握りしめながら目を合わせた。

「もう一度……してください」

優しく笑った先輩は、私のお願い通りもう一度唇を合わせてくれたけど……またすぐに離れてしまって。
私がどうして欲しいのか分かってるくせにそうしてくれない先輩にいい加減我慢できなくなって「そうじゃなくて……っ」と訴えかけると、また笑われた。

「優しくって言ったのは花奈だよ」
「意地悪しないで……いつもみたいに、してください……」

恥ずかしくて泣きそうになりながら言った私に、先輩は「やっぱりマゾなんじゃない?」と冗談半分に笑って。
それから、抱き寄せて……私が望んでいた通りのキスをしてくれた。

私の望みを全部満たしてくれるようなキスにトロンと溶け出す意識。
「ベッド行く?」ってキスの合間に聞いた先輩に、こくんと小さく頷いた。




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