イジワルな先輩との甘い事情
そんな私のもやもやに答えたのは、園ちゃんだった。
たまたま一緒になった食堂で、手招きされたと思ったらぐいっと首根っこを掴まれて顔を寄せられて、危なく持っていたカレーをトレーごとこぼしそうになった。
文句を言うよりも先に「まさか古川が北澤さんの本命じゃないよね?」と、怖い顔で聞かれて首を傾げる。
「古川って……最近よく先輩と一緒にいる人?」
「そう。秘書課の古川絵里加。常務の娘らしいよ」
「秘書課……」
やっぱりそうか、と思いながら園ちゃんが座る四角い四人掛けのテーブルに座る。
L字型に座ったところで、「最近やたら北澤さんの周りうろついてるらしいじゃない」と、こそこそと耳打ちされて、「そうかも」と頷く。
「私、フロア違うから知らなかったんだけど、もう二週間とかになるって他の子から聞いて。
で、今日花奈子に連絡してみようと思ってたらちょうど見つけたから声かけたんだけど……あ、後輩一緒? なら全然後でもいいんだけど」
「ううん。安藤さんは今日お弁当だっていうから大丈夫だけど……でも、他のフロアまで噂になってるんだ」
「まぁ、うちの課は噂好きな人多いから余計かもしれないけど割とね。
預金課ではそういう話にならないの?」
「うん、まだ……」
「私は気にはなってたけど」と呟くと、「そりゃそうでしょ」って呆れながら笑われてしまう。