イジワルな先輩との甘い事情
「恋敵だもんねぇ。気になるよね、そりゃあ。
でも……どういう関係にしたって、やけに目立ってるらしいじゃない」
「うん……」
「っていうか、古川さんが北澤さん会いたさに融資管理課に用もないのに通ってるって話だし、付きまとわれてる感じなのかもしれないけど……それにしたってねぇ」
「でも……私も何度か見かけたけど、先輩も嫌そうな顔はしてなかったよ」
「当たり前じゃない。相手は常務の娘なんだから。嫌な顔して怒らせでもしたら出世にも響きそうだし」
「え、そんな私情が出世に影響するの?」
「普通はしないだろうけど、万が一を考えればって話よ。頭のきれる北澤さんは、それくらいは考えて接してると思うけど」
その理屈でいくと……私もそういう事なんだろうか、とふと思い、胸がギクリと音を立てた。
私のお父さんは専務だ。
だから先輩は私の告白を断れなかったって、そういう事にならない……?
だから、無下にできなくて、だらだらこんな関係続けてるって事に……ならない?
私は今までお父さんの立場だとかを考えた事はなかったけど、先輩は?
私に付き合う事で出世を狙ってるだとかそんな事はないと思うけど、その逆は……あるかもしれない。
私を断ったら、出世に影響する可能性がないとも言い切れないから、だから……?