イジワルな先輩との甘い事情
「いつか……こうなるんだろうなって、分かってたのに……」
代わりにこぼれた自分のための独り言が、冷たいコンクリートの上に静かに落ちる。
身体は凍ったように動かないのに視点はうまく定まらず歪んでいて、おかしな感じだった。
現実味がないのは、ただ受け入れたくないからなのか。
「私、全然分かってなかったみたい……。こんなにショックだなんて、思わなかった……」
先輩はいつでも優しかったから。
私に笑いかけてくれたから……私は、都合のいい女でいいからって言いながらも、やっぱりそこに想いの先を期待していて。
そんな、私が勝手にした欲張りな期待が今ポキリと折れて、胸に突き刺さったように痛い。
さっき、園ちゃんと松田に塞いでもらった傷がみるみるうちに開いていく気がした。
そう考えて、違う……と、キュッと唇を引き結ぶ。
これは先輩と私の問題だ。もっと言えば、私だけの問題。
だから、園ちゃんと松田に傷を塞いでもらうのは間違ってる。
ただ何もしないで傷ついて、優しいふたりに頼るのは、違う。
そう思って、ぐっと両手をそれぞれに握りしめた。
しっかりしなくちゃダメだ。
自分で望んであやふやな関係続けてきたんだから。
それなのに、傷ついてる場合じゃない。
そう思って、意識していないとショックに呆けてしまう頭を、必死に働かせた。