イジワルな先輩との甘い事情
「終わらせなきゃ、だよね……」
最初から間違っていた関係なんだから、ちゃんと終わらせなくちゃダメだ。
もしかしたら、まだしがみついている事はできるかもしれないけど……そんな事していたって傷が増えるだけだから。
古川さんが先輩のマンションに入って行った。
たったそれだけの事実にここまでショックを受けるようなら、続けていちゃダメだ。
そんなの、先輩にだって迷惑がかかるだけなんだから。
それくらいは前から私にも分かっていて、分かっていたくせに関係を続けていた自分は本当にダメだとは思うけど、何かきっかけがなくちゃ離れるなんてできなかった。
半年間、間違ってる事に気付きながらも、それでもただ好きだって気持ちを言い訳に続けてきた。
自分から終わりにするなんてできなくて、先輩が甘やかしてくれるまま、どこかでダメだって思いながらも先輩の優しさに甘えてた。
だからきっと……今がそのきっかけだ。
……受け入れなくちゃなんだ。
ずっと用意していた覚悟はもう、受けたショックでバラバラに砕け散っていたけど、それをかき集める。
なけなしの勇気を握りしめて顔を上げると……悲しそうにするふたりがいて、少し泣きそうになった。
「ちゃんと、話してくるから。帰ってて。……ごめんね」
最後になんとか笑顔を作って謝ると、園ちゃんはぐっと何かを我慢したような表情をした後、頷いた。