イジワルな先輩との甘い事情
「頑張りなよ! いい? 男はね、北澤さん以外にもいっぱいいるんだから。
花奈子が落ち着いたら、いい男ばっか揃えて合コンセッティングしてあげるから!
Aカップだってね、好きって男はゴマンといるんだからね」
元気づけようとしてなのか、わざとカップ数を出した園ちゃんに、スイーツバイキングの時と同じように「私はB……」って控えめに返したけど、今度は睨まれなかった。
代わりに向けられた優しい眼差しに胸の奥が熱くなる。
「そうだぞー。別にすぐ次いかなくても、俺と一緒にフラフラするのもひとつの手だしな。
だから……気楽に行ってこい」
少し言葉に詰まりながら言う松田は、過去の自分に私を重ねたのかもしれない。
必死に作ってくれてる笑顔に、そう思った。
「ありがと」と短く言ってから、ふたりに手を振って背中を向ける。
大丈夫。……私は、大丈夫だ。
自分から始めた間違った形の恋なんだから、大丈夫じゃなきゃダメなんだ。
始め方を間違えちゃった恋だからこそ、終わりはちゃんとってずっと思ってたんだから。
好きな事だけ伝えて……綺麗に終わりにしようって。
ずっと覚悟してきた言葉だけを抱えて、震える足でマンションに入ってエレベーターの前に立つ。
そして、ボタンを押そうとして手を止めた。