イジワルな先輩との甘い事情
「どうしたの? 〝俺も〟って言って欲しいの?」
言われた言葉に、ひっくって泣き声が漏れた。
言って欲しい――。
でも、それを自分からお願いするのは違うっていうのも分かっていて……。
どうしょうもなく溢れ出した想いが、行き場をなくして苦しい。
一歩先輩に近づいて、手を伸ばす。
つま先立ちになって、先輩の肩を寄せて……私からキスをした。
何度もしたキスなのに、こんなに切なく感じるのは初めてだった。
先輩とのキスはいつも甘くて幸せなモノだったけど……きっと全部私の勘違いだったんだなぁとぼんやり思う。
そこに先輩の気持ちがなければ、甘くも幸せなわけもないのにと。
熱く感じる先輩の唇からそっと離れて……驚いている先輩を見つめた。
「私は……お願いしなくちゃ、好きだとも言ってもらえないような、それくらいの存在ですか……?」
こんな質問、困らせるだけなのに。
感情が暴走して、勝手に声になっているみたいだった。
泣きながら言う自分を、どこか遠くから眺めているみたいだった。
ボロボロこぼれ落ちる涙を拭いながら、〝私〟が言う。
「私は、先輩が好きだから……都合のいい女でもなんでもいいと思ってました。
でも……好きだから、やっぱりツラいです……」
先輩との関係が、終わっちゃう……。
だから黙ろうと思うのに、止められなかった。