偽りの自分。
『とりあえず、クラスの奴らから何か言われても無視しとけ。』
先生はそう言って、空き教室から出る。
『吉野さん...なんで言わなかったの...?』
あたしは、先生がいなくなったのを
確認してから言った。
『自慢の娘でいたいの....
先生に言ったら親に伝わるでしょ...?
親の期待に応えたいの....。』
吉野さんは、静かに言う。
わかる気がする。
元々、あたしだって親が
海外から帰ってきたときに
誉められたくて頑張ってたし。
今は“ミス”のため、
期待に応えるため、
色々な理由があるけれど吉野さんの気持ち
わかる気がするな....。
けれど、いじめはいじめている人が悪いの。
何も、吉野さんは悪くないの。
頑張っているんだから、
色々なことがこなせるんでしょ?
一人で抱え込んでいたなんて、親が知ったら
悲しいと思う。
『桜田さん、いつもありがとうね。
本当はあたしに気をつかってるだけだよね?
ごめんね....。』
ん....?
この言葉は....?
“気をつかってるだけだよね?
あたしが一人になるのが可哀想だからって....
ごめん。”
あたしが前に吉野さんに言った言葉に似ている。
違うよ。
あたしは、吉野さんといたいんだって。
『違う!あたしは...吉野さんといたいの!
気をつかってるんじゃないよ...?』
“あたしが.....桜田さんと...いたいから?”
あたしが...吉野さんを救う番なんだ。