君はあたしの天然王子
「え…?」
オレは意味が分からず、首を傾げた。
「あたし、啓吾くんのこと好きだよ。でも…両想いにはなりたくないの」
え…
「ど…どういうことでござんしょ?」
「あたし…美奈でさえ言ってないんだけど…大好きな人に裏切られたことがあるの」
「え…」
「大好きだった人によ?尚陽くんだったら分かるよね…?大好きな人はかけがえのないものだって…」
「うん」
分かるよ
痛いほど分かるよ
「詳しいことは言いたくない。…けど、そんなので裏切られても、懲りずに啓吾くんのこと好きになっちゃったから、あたしは両想いにはなりたくない」
「佳奈美ちゃん…」
「応援してくれる美奈や尚陽くんには悪いけど、また裏切られるくらいなら もう付き合いたくないの」
オレは何も言えずに、ただ鞄を持つ手に力を込めた。