君はあたしの天然王子






それと同時に、唇に触れる温かい感触。


「…ありがとね、美奈」


「こちらこそ!」



その後、物分かりの悪い尚陽くんに地理を叩き込み、あたしは帰宅した。



「美奈おかえりー。」


お母さんがキッチンから顔を出す。


「ただいま。」


「美奈、お兄ちゃんのこと聞いた?」


「あー、結婚式のことでしょ?」


「それもだけど、お兄ちゃん、結婚したら大阪に行くみたいよ。」


「えっ…」



大阪…?



「なんで…?」


「由陽さんの仕事の都合ですって。だから、お兄ちゃんも大阪で新しく就職するって。」



ってことは…



お兄ちゃんが結婚しちゃったら、もう頻繁に会えなくなるってこと…?




「なに?美奈、寂しいの?」


お母さんがニヤニヤしながら聞いてくる。



「ち、違う!そんなんじゃない!」



そう言い残して、あたしは自室へと向かった。









< 209 / 240 >

この作品をシェア

pagetop