君はあたしの天然王子
それと同時に、唇に触れる温かい感触。
「…ありがとね、美奈」
「こちらこそ!」
その後、物分かりの悪い尚陽くんに地理を叩き込み、あたしは帰宅した。
「美奈おかえりー。」
お母さんがキッチンから顔を出す。
「ただいま。」
「美奈、お兄ちゃんのこと聞いた?」
「あー、結婚式のことでしょ?」
「それもだけど、お兄ちゃん、結婚したら大阪に行くみたいよ。」
「えっ…」
大阪…?
「なんで…?」
「由陽さんの仕事の都合ですって。だから、お兄ちゃんも大阪で新しく就職するって。」
ってことは…
お兄ちゃんが結婚しちゃったら、もう頻繁に会えなくなるってこと…?
「なに?美奈、寂しいの?」
お母さんがニヤニヤしながら聞いてくる。
「ち、違う!そんなんじゃない!」
そう言い残して、あたしは自室へと向かった。