君はあたしの天然王子
ファミレスから帰って、あたしはクローゼットの中を漁った。
「あった…!」
あたしの手には、ボロボロで色褪せた絵本。
これは、あたしとお兄ちゃんの思い出の絵本…。
「なつかしいなあ…」
主人公のくまが、一年に一度しか咲かない“白い花”を探しに出かける、という内容なの。
その白い花を、風邪で寝込んでいるお母さんにプレゼントすると、すっかり元気になってしまう話なんだ。
あたしとお兄ちゃんはこの話が大好きで、いつも繰り返し読んでいた。
「そういえば、この“白い花”を探しに行ったなぁ…」
絵本を開いた瞬間、あたしの中にある思い出が蘇った。