~恋に気付くとき~
トールちゃんらしき人が、大きな木と塀の間にあたしを引っ張りこんだ。


「結っ、一人でこんなとこウロウロしてたら、危ないだろっ。襲われるぞっ。」


「そんなことっ、ないもん。それより、トールちゃん…。一日中どこにいたの?遥香先輩は?」


「学祭は、かったるいからフケて、さっききたんだよっ。」


「へ…っ?さっきって、後夜祭だけ…?なんでわざわざ…?」


「う……っ。」

何故か、言葉を詰まらせるトールちゃん。


怪しいけど…。


「トールちゃん?あたしはトールちゃんに会えて嬉しいよっ。」

本当に…。

嬉しいっ。


あたしは、このとき初めて自分の素直な気持ちを言葉にした。


告白は出来ないけど…。


「俺…。」


ードーッンッー

トールちゃんの言葉の続きは…。


花火の音で書き消された。

学祭が終わる…。


トールちゃんが、あたしの腰を引き寄せて…。


優しいキスを、あたしに落とした…。
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