満月幸福理論
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会いたいと、願うけれど。
ひと目みたいと、夢見るけれど。
分かってるよ、君には会えない。
それが僕の運命なんだから。
違うね。
“ぼくたち”の運命なんだから。
君は、明るくて、優しくて、強い。
すべてのものを平等に照らすのが自分の仕事だと、嬉々として笑う君は働きっぱなしだ。
そんなに働いて、辛くないの?と
まだ彼女を見る事ができたころのぼくは、
いつも彼女を心配していたっけ。
その度に彼女は微笑んだ。
これが私の幸せなの、と。
そんな彼女の温かい心がきっと伝わるんだろう。
この世の生き物は、美しく芽吹いた。
涙が出るほど美しく。
透けるほど青い湖の周りに広がる、大地の伊吹。
そよそよと、音を立てて。
ありがとうと彼女に礼を言う。
生きとし生けるものの全てに、君は愛されていた。
来る日も来る日も笑っていた。
でも、ある日君は泣いたんだ。
君は閉じこもってしまった。
曇り空のふわふわのベッドには、夜しか行かないなんて決めていたくせに、
あんなに自分の仕事に誇りをもっていたはずなのに、
君は一切それらを放棄した。
どうして泣いてるの?
────分からないの?
分からないから聞いてるんじゃないか。
────言えないわ。
ぼくが理由を聞くと、更に彼女は機嫌を悪くした。
彼女が泣き止まないから、地は溶ける。
彼女が泣き止まないから、生き物は横たえる。
─────私、一番大切な事を忘れていたの。
ひとしきり泣いて、真っ赤に腫れ上がった目を一生懸命隠した君は、ある日僕に告げた。
────愛しいあなたを照らすのを、忘れていたの。
ぼくのために、ないていた。
生きとし生けるものに愛される君が、僕だけの為に。
じゃあ、君の光で照らしてくれる?
嬉しくてそう言ったら、彼女は首を横に振った。
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