君待ち人
「あ!」
ココアメロンパンを食べ終わったと同時に、緋衣ちゃんが勢いよく立ち上がった。
「忘れてた!!」
あちゃ~と頭を抱え込んだ緋衣ちゃんに、「どうしたの?」と尋ねる。
「昼休みにさ、担任に職員室に来いって言われてたんだよね」
「じゃあ早く行かないとじゃん。行ってきな、緋衣ちゃん」
「うん。ごめんね、桜」
「いいよいいよ。ほら、早く」
緋衣ちゃんは急いで屋上を出て行った。
緋衣ちゃん、忙しいな。大変だな。
他人事のように同情しながら、お弁当を食べ終え、片づけ始めた。
教室へ戻ろうか迷ったけど、こんなに天気がいいんだもん。外でひなたぼっこしてから戻ろう。
私はフェンスにもたれかかり、立てた膝を抱えた。
涼しい風が、茶色い髪をなびかせる。
「気持ちいい……」
特別暑くもないし、風も涼しいし、ちょうどいい気候だ。過ごしやすい。
こんな日が、ずっと続けばいいのに。