君待ち人
『――起きて。起きてよ、桜ちゃん!』
聞こえてきたのは、子どもの可愛らしい声。
私の名前を、呼んでる……?
私は『まだ眠い』と文句を呟きながら、声のする方向とは逆の方向に体を向かせた。
『起きてってば。一緒にお外で遊ぼうよー』
『あとちょっとだけ~』
もう一回、寝返りを打つ。
それでも私を呼ぶ声は止まず、むしろ声量は大きくなった。
ねぇねぇ、と私の体を大きく揺らし、私の眠りの邪魔をする。
『桜ちゃんってば~』
『……ん~、わかったよぉ』
しつこさに負け、ゆっくりと上半身を起こす。寝ぼけ眼を両手でこすった。
まだ朦朧とする意識に留まったのは、目の前にいる、小さくてあどけない男の子だった。
『しーくん?』
その名前がひとつだけ、頭の中に浮かんだ。