君待ち人
『ほんとだ!!綺麗だね』
『うんっ』
早咲きの桜を目の前に、お互い笑い合った。
今は三月。季節は、春。
期待と喜びを運んでくる、この季節が好きだ。
私と同じ名前の桜を、大好きなしーくんと一緒に見ることができる、この季節が好きだ。
『来月は私の誕生日だ!六つになるんだよー!すごいでしょ!』
『わあ、すごーい!じゃあ、プレゼント持ってくるね』
『そんなのいらないよ』
『え?』
私は手を繋いだまま、桜の木の下まで走った。
薄紅色が囲むこの場所で、しーくんと視線をかち合わせ、へへっと無邪気に笑った。
『しーくんがお祝いしてくれるだけで、嬉しいんだぁ』
こんな風に満開の桜の下で、しーくんといつも通り遊ぶことが、プレゼントよりも嬉しくて。
これだけで、もう、充分だった。
もうすぐ六歳になる私は、あまりにも純真無垢で。
真っ白な心は、残酷さを知らない、ピュアそのものだった。
桜が儚いだなんて、微塵も感じなかった。