君待ち人
頬を桜と同じ色に染めるしーくんは、私の手のひらを両手でくるんで、ギュッと力を込めた。
弱々しくて、それでも温もりは直接伝わってくる。
春の陽気を集めたひだまりみたいな、そんなしーくんの手のひらが大好きだった。
『僕、たーくさんお祝いする』
『たくさん?』
『うん!たーくさん』
『ありがとう、しーくん』
両腕をうんと大きく広げて、『たーくさん』を精一杯表現する。
バカみたいに真っ直ぐなしーくんに、表情が柔らかくなる。
ゆらゆら散っていく花びら達は、その光景を華やかに飾り立ててくれているようだった。
『僕ね、ずっと桜ちゃんの隣にいる』
『私もずっと、しーくんの隣にいる』
ずっと。
そう、何の躊躇もなく、永遠を信じた。疑いもしなかった。
それは、初めて交わした、ひどく幼い約束だった。
私としーくんは、しゃぼん玉はいつかは必ず割れてしまうと、知らない子どもだった。