君待ち人




凪雲先輩、ずるい。


ぬるい雫が、涙袋に溜まる。




「鮮やかな青空……例えば、そう、今日の空みたいに、晴れるんだ」


「……っ、私も、同じです」




涙がこぼれ落ちる前に、手の甲で拭い取った。


凪雲先輩と顔を見合わせて、ふわりと表情をほころばせる。




私も、凪雲先輩と一緒にここで待ち人を待つ、この放課後という短い時間が毎日楽しみなんだ。



私も、凪雲先輩と一緒にここで待ち人を待ってるから、ちっとも寂しくないんだ。




一人で初恋の男の子を待ってたら、「まだかな、まだかな」と来る日も来る日も信じ続けるだけで、きっとつまらなかった。


あの男の子が来てくれる日が、空よりももっと遠くに感じていただろう。



だけど、彼が一緒だから。

彼が隣にいるから。




だから、こんなにも毎日が色鮮やかなんだ。


だから、こんなにも毎日が待ち遠しいんだ。






「私の心は今、晴れました」





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