君待ち人








次の日。




「桜、いいことあったでしょぉ」



午前の授業を終え、昼休みのチャイムが鳴り渡った。


ピクニックに最適な日和の本日も、昼食を摂る場所は、教室ではなく中庭だ。



昨日お気に入りリストに加入されたココアメロンパンを、緋衣ちゃんは今日も売店で買った。

ココアの風味を香らせながら、私を訝しんでいる。



「え!?」


「だってそのお弁当、すっごく豪華だもん」



私のお弁当を指差して、ニヤニヤしながら推理した。


今日の私のお弁当の中身は、トマトのクリームパスタ。

ご明察。推理通り、張り切りました。



やっぱり緋衣ちゃんにはバレちゃったか……。




「何があったか教えなさい」


「……別に、特別いいことなんてないよ」




ただ、凪雲先輩が嬉しいことを言ってくれただけ。


……それが、いいことなんだろうけど。



緋衣ちゃんには教えられない。



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