君待ち人
あの公園で凪雲先輩と一緒に、待ち人を待っている。
緋衣ちゃんがそのことを知ったら、恋だのなんだの、はしゃぐだろう。
それに、なんだか二人の時間を邪魔されそうで、打ち明けようとしてもブレーキをかけてしまう。
……変だよね、私。
凪雲先輩と私は、ただ待ち人を一緒に待ってるってだけの関係であって、恋人でもなんでもないのに。
「もしあったとしても、緋衣ちゃんには内緒」
「えー、また内緒?」
「いつか、大人になったら教えるから」
「えぇ~、今がいいよ!」
緋衣ちゃんは唇を尖らせて、「ケチぃ」とふてくされた。
私が、皆が、大人になったら笑って話せるのかな。
名前のわからないこの気持ちも、密やかに秘めているあの時間も。
「三吉さん」
ふと背後から私の名前を呼ばれて、振り返った。
声の主は、美人な生徒会長だった。私の後ろで、姿勢よく立っている。