君待ち人
「ちょっと桜、どういうこと?」
「さあ?」
「なんであの会長が桜を指名したの!?」
「……なんでだろう」
横から「なんでなんで」と質問攻めされながらも、黙って会長の後ろ姿を見つめていた。
私だって、会長に聞きたい。
どうして私なのか。
会長の友達に頼む方が、気楽だろうに。
私じゃなきゃいけない理由でもあるの?
心に影が帯びて、胸がざわつき始めた。
会長の考えが、全くわからない。
「会長、桜のこと気に入ったのかな?桜、可愛いし」
「えー、そんな理由?ていうか、可愛くないよ」
「いーや。可愛いよ、桜は」
「可愛くないよ。……可愛くないよ」
「なぜ二回繰り返したの」
大事なことなので、と堅苦しく返せば、緋衣ちゃんはプッと失笑した。
でも、お世辞でも嬉しいな。
悶々と悩んでいた私の心模様が、うっすら凪いでいった。