君待ち人
会長は一枚の資料を、ソファーとソファーの間にある、長テーブルの隅に置いた。
私より白く、きめ細かい肌。小さく、整った顔立ち。細く、長い指。
女の私でも見惚れるくらい、綺麗だ。美しいという言葉は、会長のために作られたとさえ感じる。まさに、才色兼備。
「どうかした?」
私の眼差しに気づいた会長が、首を傾げた。
私はさっきから解けない緊張がほぐれず、
「い、いえ!なんでもありません!」
とはぐらした声が、わかりやすく震えてしまった。
クスリと一笑する仕草も、絵になる。
あーあ、会長に笑われちゃった……。恥ずかしい。
穴があったら入りたいって、こういう時に使うのかな?
私は身を縮めて、会長が持っていた資料を半分受け取り、作業を始めた。
……やっぱりわからない。
会長が、どうして私を選んだのか。
私じゃなくてもよかったんじゃないのだろうか。
疑問の答えに意識が行き過ぎて、作業がなかなか進まない。