君待ち人
「あ、それこっちよ」
「えっ、あ、すみません!」
別のところに集中していたせいで、間違えた場所に資料を置いてしまった。
こんなんじゃ手伝うどころか、確実に足でまといだ。
どんな理由であれ、会長から直々に頼まれたんだから、しっかり作業やらなきゃ。
そういう意思はあるんだけど、やっぱり気になるんだよなぁ。
チラッと会長を一瞥すると、手早く、効率よく、作業を着々と進めている。
その真剣さに、私も頑張らなくちゃと意気込み、疑問をとりあえず頭の隅へ追いやった。集中力が格段に持続し、作業が捗る。
十五分後、ようやく作業が片付いた。
途中からはこの作業に慣れてきて、ハイスピードで終えることができた。
「こんなに早く終わるなんて。ありがとう。三吉さんのおかげよ」
「いえ、そんな!」
会長の誉め言葉に、お世辞だと理解していても照れくさくて、頬を赤くする。
会長がほとんどやったも同然なのに。