君待ち人
「……いえ、わかりません」
カップをそっと置いて、正直に答えた。
いくら考えても、欠片も思い浮かばなかった。
やっぱり会長は、何か目的があって、私を指名したんだ。
でも、一体どうして。
どうして、私を?
「そうよね。わからないわよね」
カップの中のレモンティーと、会長の瞳は同じ速度で艶やかに波打っていた。
「副会長……凪雲くんは、あれからあなたに何か話した?」
会長は持っていたカップをローテーブルに置いて、真っ直ぐ見つめる。
何かを決心したかのような表情をしていた。
凪雲先輩は、私にはまだ、心を完全に開いていない。
ただ、ちょっと、ほんの一歩程度の距離が埋まっただけ。
「いえ、何も」
彼の約束に関わることは、一切聞いてない。