君待ち人
「そう……」
たった一言の相槌をして、私から視線を外した。
どうやったら、勇気は生まれるのだろうか。覚悟を持てるのだろうか。
凪雲先輩の傷だらけの心を、抱きしめたい。
だけど私は、踏み込もうとする度にためらって、彼の心の前で立ち尽くしている。
彼の約束に触れることで、また辛くさせてしまったらどうしよう。不安にさせてしまったらどうしよう。
彼の過去を暴いても、私にできることは何もないかもしれない。彼をえぐって、傷を増やすだけかもしれない。
今も私は、足を竦ませ、ボーダーラインを越せずにいた。
「三吉さんは、凪雲くんのことが……好き?」
二つ目の質問に、思わず目を丸くした。
会長は再度私に視線を戻した。見透かすように、貫く。
「好きじゃありません!」
咄嗟に立ち上がる勢いで否定した。想像以上に生徒会室に大きく響く。もはや叫びだ。
違う。違う。違う!好きじゃない!
私が好きなのは、凪雲先輩じゃない。あの、初恋の男の子だ。