君待ち人
「他に好きな人がいるの?」
「え、……あぁ、まぁ……」
途端に羞恥心に火が付いた。さっきの勢いはどこへやら、気まずくなって背中を丸めた。思うように言葉が出てこなくて、レモンティーを飲んでごまかす。
初恋の男の子。
私は今でも彼が好き。
その心は、何かに抗うように足掻くように、ギシギシ軋んでいた。
「私ね、凪雲くんのことが好きだったの」
いきなりの告白に、驚きを隠せない。
好き“だった”?過去形?
すぐには意味を理解できなかった。
「でも、諦めなきゃいけなかった」
「……え?」
また、理解しがたい言葉が、耳を突き刺した。
どういうこと?
まったく意味がわからない。
「詳しくは言えないんだけど……私はね、凪雲くんの幸せのために、恋を諦めたの」