君待ち人




「他に好きな人がいるの?」


「え、……あぁ、まぁ……」



途端に羞恥心に火が付いた。さっきの勢いはどこへやら、気まずくなって背中を丸めた。思うように言葉が出てこなくて、レモンティーを飲んでごまかす。



初恋の男の子。

私は今でも彼が好き。



その心は、何かに抗うように足掻くように、ギシギシ軋んでいた。





「私ね、凪雲くんのことが好きだったの」



いきなりの告白に、驚きを隠せない。



好き“だった”?過去形?


すぐには意味を理解できなかった。




「でも、諦めなきゃいけなかった」


「……え?」



また、理解しがたい言葉が、耳を突き刺した。


どういうこと?

まったく意味がわからない。




「詳しくは言えないんだけど……私はね、凪雲くんの幸せのために、恋を諦めたの」




< 148 / 278 >

この作品をシェア

pagetop