君待ち人
会長は静かに瞼を伏せた。長いまつ毛が濡れているように見えるのは、気のせいだろうか。
凪雲先輩の幸せのために、ってどういう……?
さらに頭が混乱する。
会長は凪雲先輩のことが片思いしていたけれど、凪雲先輩の幸せのために想うことをやめた。
試しに話を整理してみても、さっぱりわからない。
「凪雲くんの待ち人が、凪雲くんに会いに来たら……凪雲くんはやっと幸せになれる」
凪雲先輩の待ち人は、彼を幸せにできるっていうこと?
瞼から覗く、会長の双眼とかち合う。
あ、震えてる。会長の目も、声も。
それとも、私のが震えてるのかな。もう、何も、わかんないや。
「だからね、忠告をするためにあなたに声をかけたの」
「忠告、ですか?」
「ええ。たったひとつ、あなたに伝えたくて」
なんでだろう。
会長に直視されると、胸が締め付けられる。まるで、子犬が猛獣に怯えるみたいに。
「絶対に、凪雲くんの幸せを邪魔しないで。凪雲くんのことを、好きにならないで」