君待ち人
「白河くん、ありがと」
次第に涙が溶けていった。私は白河くんから離れ、お礼を言う。
温もりを惜しみながら。
「もう平気なのか?」
「うん。白河くんが励ましてくれたおかげ。本当にありがとね」
涙で濡れた頬を拭いながら、潤んだ瞳を細めた。
白河くんが私を抱きしめて励ましてくれたこと、冷静に考えたらものすごく恥ずかしいけど、それ以上に嬉しかった。
初恋と同じ、穏やかな春の匂いが鼻をかすめた。
「そうか……」
「じゃあ、私行くね。バイバイ」
「お、おう。じゃあな」
白河くんは何か言いたげに、私の姿が消えるまで見つめ続けた。
私はそのもどかしい視線には気づかず、凪雲先輩のいる公園へと向かった。
会長の忠告を、拒みはしない。
だから、彼のそばで、一緒に待ち人を待たせて。
好きとか、恋とか、そういう不安定な感情は要らない。
……神様。私に、勇気を宿して。