君待ち人
「……俺、わかってっから」
「何を?何をわかってるの?」
「桜ちゃんのことだよ」
しーくんは頑なにこちらを振り向かない。
私のこと?
私自身わからないことだらけなのに、しーくんにはわかるの?
公園のシンボルの大きな木が、強い風によって揺れる。
その風が、いやに冷たくて。
温かかったはずの体温が、凍てつく。
「桜ちゃんの心には、今、誰がいる?」
ほんの少しだけ私の方をなぞった眼差しに、息を呑む。
私の心にいるのは。
いる……のは……。
あれ?
誰……?
私は無自覚に胸元を弱々しく抑えていた。