君待ち人
しーくんは、先に公園を去っていった。
公園を出て行くしーくんの後ろ姿は、オレンジに透けて、眩しかった。
もう、私が六歳の頃の、あの可愛いしーくんじゃない。
私は初めて、高校生になった“しーくん”を目の当たりにした気がした。
「大好きだよ」
私しかいない公園で、もういなくなったしーくんに届けるように呟いた。
恋愛感情じゃなくても、約束を交わした頃とは違う意味になっても。
たったひとりのかけがえのない幼馴染として、初恋の男の子として、
私は君にこの言葉を紡ぐ。
しーくんに直接伝えられなくて、ごめんね。
私はしーくんがいなくなってからしばらくの間、公園に残っていた。
もしかしたら凪雲先輩が戻ってくるかもしれない。そんな期待をしていたけれど、彼が再び姿を現すことはなかった。
私は地面に落ちていた木の枝で、ベンチの横の地面に文字を彫った。
“ごめんなさい”
私が書いたことを、明かすことなく。