君待ち人
「凪雲先輩。好きになって、ごめんなさい」
私、気づいたら彼のことを好きになってた。
知らない間に、好きになってしまっていた。
だけど、決して報われない恋。
彼はずっと待ち人を待っている。
きっとその人が、彼にとってかけがえのない人で。
私は、彼の待ち人には一生敵わないのだろう。
たとえ叶わない恋だとしても、自分の本当の気持ちに気づいてしまったのなら、気づいていないフリをすることはできない。
悲しい現実から目を逸らしてはいけないと、痛いくらいわかってる。
時間を巻き戻すことは、誰にも……神様にも不可能なのだから。
私は深く“ごめんなさい”という文字をもう一度彫った。
すっかり暗くなった夕闇の下、公園を出て家路につく。
私、知らなかったよ。
好き。
この二文字が、苦しさを駆り立てる、ひどく淡い台詞だったなんて。