君待ち人
「そ、それで!?どうだった!?」
「男の子に会って、約束を果たして、それで……」
「で?めでたくカレカノ?」
「……ううん。カレカノには、ならなかった」
ううん、私のせいでなれなかったんだ。
私は瞼を閉じた。瞼の裏に、昨日の出来事が早送りで再生される。
ごめんという言葉ばかりが、虚しく響いていた。
「ちょっと、遅かったんだよね」
「え?え?ちょ、待って。話についていけない。……それって、あっちに彼女ができてたってこと?」
「逆だよ。私が違う人を好きになっちゃったの」
最低だよね、私。
私はゆっくりと、瞼を開けた。
虹彩を突き刺す光が、痛々しい。
私には、もう、この世界は綺麗なことばかりだと、思えない。
だって、汚れた感情も、空っぽな衝動も、傷つける代償も、無責任な涙も知ってしまった。
「……そっか」
緋衣ちゃんはそれだけ言って、それ以上は掘り下げなかった。そうしないでくれた。