君待ち人
さあ、一歩
紅葉色が映える、十月になった。
月日が過ぎるのはあっという間で、もうすっかり肌寒い季節となった。
若葉公園のシンボルである桜の木も、緑だったあの葉をすっかり茶色に衣替えさせている。
日が暮れるのが早くなった。秋の始まりを示唆する。
あれから、公園の大きな木に隠れて、彼を見守っていることしかできていない。いつもバレないかそわそわしている。
これじゃあストーカーもどきじゃなく、完全なストーカーだ。
本当に情けない。
自分がここまで小心者だったとは。
メンタルが激弱すぎて、ため息が出る。ほら、こうやって悲劇のヒロインぶって、不幸に酔いしれているんだ。
なんて醜いんだろう。
会長が二日連続で公園に駆け付けた時以降、会長は一度も公園を訪れていない。
だけど、凪雲先輩の横顔は、日に日に木漏れ日を払いのけて、やつれていってる。
私、何やってんだろう。
……何もしない、できないまま、十月になってしまった。
深い、深い、ため息の海に溺れる。底が見えない。堕ちるだけ、堕ちていく。
どうしたら、「頑張る」と決意した気持ちを原動力に、ブレーキのかかった足で踏み出せるのだろう。