君待ち人




会長の鋭い眼光に、グサリ、射貫かれる。


いやな汗が、背中を伝う。



会長、勘がいいんだな……。



私は頷くことなく、目を泳がせた。




「……そう。忠告、守れなかったのね」



会長はオレンジジュースの表面の艶に、ふ、と視線を注いだ。



「っ、す、すみません」

「いいのよ。人の気持ちは止めようと思っても止められないものだもの」



子どもな私とは違う、大人びた言葉だった。



会長は、寛大だ。

てっきり責められるとばかり思っていたけれど、あっさり認めてくれるなんて。



もし私が会長の立場だったら、できる?否、きっとできない。





「三吉さん」


「はい」



「あなた、これからどうするの?」




これから……?

片思いの池に、ポチャン、と石を投げつけられた気分だった。




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