君待ち人
やっと交代時間になった。
私は緋衣ちゃんとコスプレ衣装から制服へと着替える。
「桜、一緒に回ろっ」
「うん」
文化祭のテンションでいつもより元気な緋衣ちゃんに、ぎこちない笑顔を向ける。
……緋衣ちゃんにこんな笑顔見せるなんて、ひどい友達だな。
でも、今は、うまく笑える自信ないよ。
恐怖心が消えてくれないの。
「最初、どこ行く?お化け屋敷とか、どう?」
「……」
「緋衣ちゃん?」
「……ねぇ、桜」
あ。
多分、緋衣ちゃんは私の作り笑顔に気づいている。
緋衣ちゃん、ごめんね。
何も言えなくて、ごめん。
いつか、ちゃんと話すから。
緋衣ちゃんと交わした約束は、何があっても絶対守るから。
「わ、私、だいじょう……」
大丈夫だよ、と強がろうとしたら。
「待ってるから」
緋衣ちゃんは取り繕った呟きごとくるんで、晴朗な表情ではっきり告げた。