君待ち人
「凪雲先輩はいつも辛そうにしてますよね。私、ずっとその理由が知りかったんです」
知らなかったでしょう?
自嘲するみたく、目を細めた。
「だけど、私なんかが知ってもいいのかなって思ってました」
今日だって、文化祭そっちのけで悩んでいた。
「悩んで、悩んで……ようやくわかったんです。一人で悩んでいても、何もわからないって。決断を下すのは私じゃない。凪雲先輩なんだから」
理由や原因を打ち明けるのは、私ではなく彼。
彼が私に踏み込まれていいのか、判断する。
私が考えても意味なんてない。
私は行動に起こすか、起こさないか。初めからその二択しかなかったんだ。
「それと、すみません。実はこの間、凪雲先輩と会長のあとをつけて、病院に行っちゃったんです」
「病院?……てことは……見たの?」
「はい。すみません」
私は頭を下げて、もう一度謝った。
いけないことなのはわかってる。だけど、気になる気持ちに負けちゃったんだ。最低だと蔑まれても仕方ない。
「そっか」
そっか?
それだけ?
「……怒らないんですか?」
「怒らないよ。俺のこと、心配してくれたんだろ?」