君待ち人
そう、だけど。
心配もしたけど、それだけだったとは言い切れない。
たとえそれだけだったとしても、普通なら怒る。怒鳴って、嫌いになる。顔も見たくなくなる。
けれど、凪雲先輩は簡単に、本当に簡単に許した。
私より何倍も、優しい。その優しさが、私の心の汚れ具合を教えているようで、思わず「すみません」と三度目の懺悔をした。
「わ、たし……っ、私!」
言え。
言うんだ。
「南雲先輩を幸せにしたいです。そのお手伝いをしても、いい、ですか?」
語尾に近づくにつれて、たどたどしくなってしまったが、今はどうだっていい。
ドックンドックン跳ねる心臓を抑える。
私は彼から視線を外すことなく、見つめ続けた。
「ありがとう」
凪雲先輩は、柔らかく微笑んだ。
それは、一歩、私が進んでも構わないという答えだった。
一歩。
たった一歩だった。
だけどその一歩は、私にとってとても大きなもので。
やっと彼の心に踏み込んだ。
やっと彼の心に触れた。
……やっと、私は彼に自分の気持ちを伝えることができた。