君待ち人
「また、よろしくね。桜ちゃん」
「はいっ!」
あぁ、泣いてしまいそうだ。
涙をぐっと堪え、彼の隣に座った。
最初にあった隙間は、もう、ない。
私と凪雲先輩との距離は、確実に近くなっていた。
ふと大きな木を眺めると、秋らしく茶色に染まった葉がひらひらと舞い踊っていた。
桜を纏っていた春の面影は、とうに失っていた。
凪雲先輩と出会った春はとっくに過ぎ、また彼と一緒に過ごす、夕暮れの時間が訪れる。
秋。それは私にとって、また待ち人を待つ季節。そして、私が一歩突き進んだ、勇ましい季節。
「文化祭、どうでしたか?」
「楽しかったよ」
「そうですか」
「桜ちゃんは?」
「……今の方が、楽しいです」