君待ち人
やっぱり。
凪雲先輩の待ち人は、あの女の子だったんだ。
ギシリと音を立てて、鼓動が軋む。
嫉妬とかしちゃいけない。受け止めなくちゃ。
そう、わかってはいるけれど、胸の痛さは走り続けた。
「その人と約束したんですか?」
「約束っていうか…………うん、約束、なのかな」
曖昧な言い方に、私は首を傾げる。
約束じゃないの?
「凪雲先輩はその人を待つ時、いつも辛そうですよね」
「それ、昨日も言ってたよね。俺、そんなに辛そうにしてる?」
間髪入れずに「はい」と返せば、苦笑いされた。
「どうしてですか?」
一番聞きたかったこと。
大切な子を待っているというのに、どうして今にも泣きそうなのか。
考えても考えても、どんな答えが潜んでいるのかも浮かばなかった。