君待ち人




告白できない理由は、もう一つある。




海は、高校一年の時に付き合っていた彼氏のことを、忘れられずにいた。


元カレが二股をしていて、ひどい別れ方をしたんだ。



そのことがショックで、別れた当初はずっと泣いていた。



俺と空は、そんな海を慰めた。『海には俺達がいるから』と、恋心を奥に追いやったんだ。




海は、元カレのことが大好きだった。


だからこそ、元カレの二股を許せなくて、そのくせ突然の別れに耐えられなくて。

布団がびしょ濡れになるほど、号泣した。





あれから時間は流れ、今では俺達の前で涙を見せなくなっていた。


だから、余計に伝えられなかったんだ。



強がって、忘れたフリをしているんじゃないか。

まだ好きなんじゃないか。


疑いが晴れず、「好き」という二文字は喉元で沈んでいった。





冬の空から、雪の結晶が降る。


俺に勇気がないことを、嘲笑っているようだった。




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