君待ち人
空の視線が、ゆらり揺れて、また俺の元に戻る。目尻を濡らす涙を、手の甲で払った。
『これからも、幼馴染としてよろしくね』
ぴんと背中を張った姿は、男の俺から見ても格好良かった。
差し伸べられた手に、自分の手を重ねる。
『ああ、もちろん』
グッと握って、握手を交わす。
手を離すと、先に空が背を向けた。
告白されて振られても、泣き顔ではなく笑顔を浮かべる空はすごい。
告白できずにいる俺とどうしても比べてしまう。
空の後ろ姿から視線を逸らした。
なんだかひどく眩しかった。
冬の空は灰色に包まれている。雪は止むことなく降り続き、俺の鼻のてっぺんが赤くなっていた。
「寒っ……」
ぶるっと身震いする肩をさすりながら、校舎の中へと入っていった。
そして、冬が過ぎ、暖かい春が来た。