君待ち人
『ねぇ、凪雲くん。放課後、校舎裏にある若葉公園に来て?』
春休みを間近に控えた、麗らかな日。
昼休みに、海は緊張した様子で告げた。
『いいけど……なんで?』
『なんでもだよ!』
詳しいことは何も明かさず、可愛らしく一笑する。
改まって呼び出して何だろう。
今は、三月。
校舎裏にある若葉公園を象徴する、大きな大きな桜の木は未だに咲いておらず、つぼみでいっぱいだ。
もう春なんだと、のどかな暖かさにしみじみ浸りながら、海の笑顔に癒されていた。
放課後になり、俺は海に言われた通り、若葉公園にやってきた。
まだ海は来ていなかった。
桜の大きな木に寄りかかり、海を待つ。
『凪雲くん!!』
海の声で、顔を上げる。海は俺の元に駆け寄り、申し訳なさそうにした。
『ごめん。私が呼んだのに……待った?』
『俺も今来たとこだよ。で?俺に何か用?』