君待ち人
ここに呼び出しまでして、どんな用件だろう。
首を傾げれば、たちまち海の顔が赤らんでいく。
もしかして。過った期待をすぐに、まさかな、とごまかした。
そんな反応されたら、自惚れてしまう。
脳裏には、空に呼び出され告白された冬のワンシーンが、巡っていた。
『あのね……好きなの』
『え?』
『凪雲くんのことが、好き!』
まずは耳を、次に脳を、最後に世界を疑った。
空耳じゃないか。妄想じゃないか。そもそも現実ではなく夢なんじゃないか。
けれど、忙しない鼓動のせいではち切れそうな心臓も、生易しい風に撫でられた感触も、目の下に集まる高熱も、どれもこれも本物で。
こちらに真っ直ぐ向けられた、照れを含むその表情は、冬の日に告白してくれた空と同じだった。
空耳でも妄想でも、ましてや夢でも、ない。
紛れもない現実だ。
『俺……』
俺も、海が好きだ。
そう返事をしようとした寸前、
『待って!!』
海は俺の顔の前に手を突き出し、ストップをかけた。
反射的に、口をつぐむ。