君待ち人





「桜ちゃんは、どうして昨日ここに来たの?」





今度は凪雲先輩が、私の方をじっと見つめながら、首を傾げて聞いてきた。



どうして?

どうして、なんて、そんなの……。




「胸が、ざわついたから」





これしか答えが浮かばなかった。



「胸がざわついた?」



私の答えに、さらに首を傾げる。



いい表現が、これしか見当たらない。どう伝えたら、もっとうまく表せるんだろう。




「なぜか昨日は約束のことをよく思い出して、授業も集中できないくらい公園に目がいったんです。……その、だから、来てみたんです……」



内心焦っていたせいで、だんだん声量がなくなっていった。




くるくると舞っている一枚の花びらを目で追いかけながら、昨日のことを回想する。



具体的じゃないけど、かなり抽象的だけど、これくらいの表現しかできない。もうお手上げだ。


それほど曖昧で、でも確かに感じたこと。



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