君待ち人
「そっか」
きっと意味不明だったに違いないのに、凪雲先輩は納得したかのように呟いた。
彼はきっと、物分りがいい。
それに、やっぱり、優しい。
「どうして?」とか「どういうこと?」とか、深く探らない。
あの桜のように柔らかくて朗らかで、繊細で大人びた……そんな人。
いつか時が来たら、誰にも何も伝えずに、どこかへ消え去っていってしまいそうな、そんな人。
「待つ時間は、辛いですか?」
「少し。手で掴んだら、簡単に壊せちゃいそうなくらいの辛さだけ。桜ちゃんはどう?」
「私は……辛くないです」
「これっぽっちも?」
「はい」
私は大きく頷き、彼の方を一瞥した。
凪雲先輩とは、違う。少しも、本当にまったく辛くない。