君待ち人






秋の紅葉がピークを迎える十一月から、人肌が恋しくなる冬が始まる十二月へと移り変わっても、海さんが公園に来ることはなかった。



年が明け、一層寒冷になる一月。

チョコレートの香りを纏う二月。



一日一日と時間は止まることなく進んでいき――また、三月になった。




海さんが凪雲先輩に告白した季節。


そして、海さんが事故に遭った季節。





若葉公園の桜の木には、桜のつぼみが飾られている。


今日も、桃色のソレを瞳にちらつかせながら、茜空の下で凪雲先輩と待ち人を待つ。




「三月に、なっちゃいましたね」


「そうだね」




きっと三月は、彼にとって一番辛い季節であり、一番嫌いな季節だろう。


だって、大切な人が眠りについた季節だから。




「いつ桜は咲くんでしょうか」


「今年は例年より早いって聞いたけど」


「そうなんですか!楽しみです」




一日でも早く、つぼみよ咲いて。


海さんの目を覚まして。




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