君待ち人
春は、出会いと別れの季節。
彼はもうすぐ花丘高校を卒業してしまう。
だからその前に、二度目の恋は一方通行のままだと知っておきたかった。
なのに、断言してくれないなんて、ひどい。
苦しくて、もどかしくて。
喉の奥がキュッと締め付けられる。
凪雲先輩が卒業していなくなってしまう前に、できることならこの気持ちを伝えたい。
伝えても、いいのだろうか。
好きだって届けても、ごめんの一言が返ってくるだけかもしれない。
私が告白する未来には、一ミリだって幸福を思い描けなかった。ただ在るのは、不安だけだった。
「桜ちゃん」
「はい?」
「君のおかげで、前より少しだけ辛さが軽くなったんだ」
一度ゆっくり瞬きをして、双眼に焼き付ける。
儚さを包む爽やかさを感じる、端麗な横顔を。
「ありがとう」