君待ち人





私はやっぱり、春が好きだ。


あなたのことが大好きだ。




初めての純情を誓い合ったのは、“始まり”で溢れた四月だった。


けれど、二度目の片恋に希望を綴ったのは、“終わり”に囲まれた三月。



正反対そうに見えて、実は同じ。どちらも、麗らかな春空の下、恋い慕い、泣いていた。




約束は赤い糸となり、私達を結んでいく。




桜の花達は、そよ風に乗って、舞った。私と凪雲先輩の間に、弱々しく散っていく。

幸せを届けるように。





ねぇ、凪雲先輩。



この公園で、また会える日を待ってます。


どれだけ時間がかかっても、この想いと共に。





凪雲先輩は「さよなら」と私に背を向けて、若葉公園から去っていった。


その「さよなら」は、永遠のものじゃない。

また会うための合言葉だ。




「凪雲先輩、さよなら」





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