君待ち人
彼の瞳
五月になった。
ぽかぽか陽気が、空気を明るく塗り替えてくれる。
「じゃーん!今日は朝早く起きたから、お弁当作ってきましたー!」
「わあ~、可愛い!」
今日は天気がいいので、中庭で緋衣ちゃんとランチすることにした。
雲一つない空は、まるで当たり前の幸せを祈っているようだった。
緋衣ちゃんの昼食は、珍しくメロンパンではなくお弁当。
緋衣ちゃんはふふんっとドヤ顔で堂々とお弁当を見せびらかす。
緋衣ちゃんのお弁当、なんだか緋衣ちゃんらしいな。
ところどころ焦げ目があるところとか、ウインナーがタコさん形なところとか。
すごく可愛らしい。
「へっへーん。頑張っちゃった」
「私のお弁当は……普通、かな」
「桜の普通は、あたしの普通じゃないの。あたしの中では豪華な部類なの!」
そうかな?
今日のおかずは、鮭のムニエル、ポテトサラダ、定番の卵焼き。空いたスペースには、昨日の夕飯の余り物を詰め込んだ。
うん、やっぱり普通だ。