君待ち人
一人きりになっても、桜の木はやはり美しくて、儚かった。
桜の木の下で約束するのは、二回目。
一回目は私もしーくんも子どもで、それでも信じ合っていた。ぼやけていた世界を、再会の合図で鮮やかにしてくれた。
お互い成長して、ちょっと大人に近づいたのが裏目に出て、私が本物だったはずの赤い糸を偽物に褪せさせた。
感情は、出会いと別れを繰り返していく間に、裏表逆になって複雑になっていく。
正しいとか、間違いだとか、きっとそんなものはない。
だからこそ、宝物みたいに大切に扱わなければいけない。
自分の好きなところも、嫌いなところも、頑張ったところも、悪いところも全部全部詰め込んで、明日に続く今日を歩んでいく。
次、凪雲先輩に会う日はいつになるだろう。
彼がここに戻ってきた日には、今度こそ「好きです」と真正面から伝えよう。